懐かしい曲を聴いた瞬間、あの頃の景色や大切な人が浮かんでくる。音と記憶の不思議なお話です
懐かしい曲が流れてきた瞬間、
「あ……この曲」
と、手を止めてしまったことはありませんか?
もう何年も思い出していなかったのに、
その頃にいた場所や、
一緒にいた人の顔、
季節や空気まで、
まるで時間を巻き戻したように
ふっと心に浮かんでくる。
音って、不思議ですよね。
私は以前、所沢市で行われていた
認知症サポーター養成講座を
受講したことがあります。
「認知症になっても安心して暮らせるまちを目指して」
という取り組みの中で行われていた講座でした。
そこで教えていただいたことの中に、
今でも心に残っているお話があります。
認知症になった方を、
「認知症の人」
というひとつの見方だけで
捉えるのではないということ。
その方にも、
今日まで生きてきた長い人生があります。
仕事をしてきた時間。
誰かを愛した時間。
家族を守ってきた時間。
笑ったことも、
泣いたことも、
頑張ったこともある。
目の前のその方が
どんな人生を歩んできたのか。
その方の歴史や尊厳を大切にしながら
接していくことを学びました。
その講座の中で、
私が特に心を動かされたのが
「音楽と記憶」のお話でした。
昔よく聴いていた歌や、
思い出のある音楽を耳にしたことをきっかけに、
昔の出来事や感情が
ふっと思い出されることがある。
音楽と記憶には深いつながりがあり、
記憶や感情に関わる脳の働きについても
研究されていることを知りました。
そのお話を聞いたとき、
「音って、すごい」
と、私は心がトキメキました。
とてもシンプルなのに、
人の記憶や感情と深くつながっている音。
目には見えないのに、
人の心を動かしたり、
忘れていた大切な時間を呼び起こしたりすることがある。
「音には、まだ私の知らない世界があるんだ」
そう思ったら、
もっと知りたい、もっと感じてみたいと
ワクワクしたことを覚えています。
今思えば、あのときのトキメキが、
私にとって
「音の世界への扉が開いた瞬間」
だったのかもしれません。
私たちにもありますよね。
昔よく聴いていた曲が流れてきて、
「あの頃、こんなことしてたなぁ」
と思い出したり。
亡くなった大切な人が好きだった曲を聴いて、
その人の笑顔が浮かんできたり。
子どもの頃に聞いていた歌から、
自分でも忘れていた景色を思い出したり。
音は目には見えません。
でも音は「振動」として伝わっています。
そして、その振動が1秒間に何回繰り返されるかを
数字で表したものが「周波数(Hz)」です。
周波数というと
急に難しい言葉に聞こえますが、
私が興味を持った入口は、
そんな難しいところではありませんでした。
「音って、人にこんなことをするんだ」
ただ、それが面白かったんです。
そして今、
私はサロンで音叉を使っています。
音叉を鳴らすと、
キーン……
と澄んだ音が響きます。
音叉によって周波数も違います。
実際に音叉の音を聴いていただくと、
私自身も興味深いなぁと感じる瞬間があります。
あるクライアントさんは、
たったひとつの音叉の音を聴いただけで、
涙がツーーッと流れてきました。
ご本人もびっくりされて、
「えっ、なんで涙が出るんだろう……」
と。
悲しいお話をしていたわけでも、
泣こうとしていたわけでもありません。
ただ、音を聴いただけ。
それなのに、
自分でも理由がわからないまま
涙が自然に流れてきたのです。
反対に、
音叉を鳴らした途端、
眉間にギュッとシワが寄る方もいらっしゃいます。
「この音、苦手です……」
そして、
「どうしてこの音だけ嫌なんでしょう?」
と質問されることもあります。
心地いい音。
なぜか涙が出てくる音。
理由はわからないけれど、
どうしても苦手に感じる音。
私は、そんな反応に出会うたびに、
「音を感じるって、本当に不思議だなぁ」
と思います。
もちろん、
「この音で涙が出たから、こういう意味」
「この音が苦手だから、ここが悪い」
と単純に決めつけるものではありません。
そのとき、その方が
その音をどう感じたのか。
私はまず、
その感覚そのものを大切にしています。
「なんだかわからないけれど、涙が出た」
「理由はわからないけれど、この音は苦手」
それも、その方が音を聴いて
実際に感じた大切な反応のひとつ。
だから音叉の時間には、
頭で答えを探すより、
まずは音を聴いて、感じてみる。
そんな時間も大切にしています。
認知症サポーター養成講座で
音楽と記憶のお話を聞いたとき、
「音って、すごい」と。
そして今、
私は音叉という「音」と「振動」に触れています。
音は目には見えないけれど、
一瞬で、
何年も前の自分に会わせてくれることがあります。
大切な人を、
心の中へ連れてきてくれることもあります。
そう考えると、
音って、
やっぱり不思議で面白い。
あなたにも、
聴いた瞬間に
誰かの顔が浮かぶ曲はありますか?
もしあったら、
今日は久しぶりに
その曲を聴いてみるのもいいかもしれません。
忘れていた大切な時間が、
音と一緒に
そっと戻ってくるかもしれません。